長崎県(カステラ・皿うどん県)にいると言われる妖怪一覧

  • アシナガ

海の怪。足長。平戸城西北二里ばかりに神崎山がある。その渚より六、七十間沖からふと海浜を見ると、腰上は常人だが、足の長さ九尺ばかりのものが松明を掲げ、歩き巡っていたという。

 

  • アヤカシ

海の怪。対馬。怪火。夕方には沖に見え、まぐれ(夕方のすこし後)には磯にくる大きな火で、火の中に子供の歩いてくるような姿が見える。沖では山の形などになって船の行く手にふさがるが、ぶつかっていけば消える。火に向かって、目の前に手を伸ばして親指を立てる。普通の火ならば指の両側から後光が出るが、魔性の火ならば指に隠れて見えない。

 

  • イクジ

動物の怪。ウナギのような色で恐ろしく長い。舟のへさきにかかると、渡り切るまで二、三日かかるという。西海南海全体でいう。

 

  • イシナゲンジョ

海の怪。石投げんじょ。西にし彼その杵郡江ノ島でいう。五月、靄の深い晩に漁をしていると、突然に岩が大きな音を立てて崩れ落ちるように聞こえる。次の日、そこへ行ってみても、何の変わったこともない。海姫、磯女などと同系らしい。深山でいう天狗礫つぶて、空木倒しなどと同じ幻聴であろう。

 

  • イソオナゴ

海の怪。磯女。九州各地でいう。イソオンナとも。五島の宇久島では磯女は乳から上はまるで人間のような体に見えるが、下半身は幽霊のようにぼやけているという。島原半島の小浜あたりでは、他所の港に停泊するときは、苫(カヤと馬の毛で編んだ蓑のようなもの)の毛を三本、着物の上に載せて寝ると磯女に血を吸われないといい、また、ふりがかり(艫綱をつけない)をするのもよい方法とされる。福江沖から久賀の浜畔にいたる五、六ヵ所によく出るといい、久賀西岸の岩屋観音下の磯には頻々と磯女が現れて人を悩ませるという。海浜の石の上で髪を砂の上にまで垂らして海を見ている女がいた。通りかかった男が声をかけると、ちょっと振り向いただけで髪が男のほうに伸びてきて、血を吸ってしまった。

 

  • ウグメ

海の怪。九州西海岸地方で舟幽霊のことをいう。シキユウレイとも、ただ幽霊ともいい、海で死んだ者がなるという。舟に化け、島に化けてくる。アカトリ(淦取り)を貸せといってきたときは、底を抜いて渡さないと舟を沈められる。つけられたら海に碇を入れるとよい。しかし、それも取られるから、はじめに石を投げ入れて騙す。煙草を飲むと消えるという。

 

  • ウミヒメ

海の怪。海姫。隠岐島東郷村。龍宮の神のこと。

 

  • ウンメ

火の怪。ウゥメ、ウンメンとも。姑獲鳥。難産で死んだ者がなる。若い人が死ぬとなるともいう。宙をぶらぶらしたり、ぼのぼのと消えたりする。その動き方は波形になる。青い気味悪い光である。

 

  • ガアタロ

水の怪。河童のこと。五島では赤ん坊のように小さくて、頭の鉢には水があり、人に憑くことがあって狐のように悪戯をするという。ガアタロの腕を抜いた話や、これと交際している老婆の話などいろいろある。祇園祭前に泳ぐと尻を抜かれる。チョッパケ(瓢の杓)は水に沈まないので河童の敵である。同久賀島ではガアタロは水の神の小使いで、小豆が好きなので、毎月十一日に小豆飯をあげる。壱岐島─髪ふり乱した子供姿という。これを使って長者になったものがいる。しかし、これが歩いたあとはびしょびしょに濡れ畳の上まで上がってくるので、長者の妻が来させないようにすると、家はたちまち没落した。ガァラッパ、ガワッパとも。尻子と相撲と豆腐ふを好む。相撲をとって片腕を抜かれ、詫び証文を書き、骨接ぎ薬を教えた。麻幹に弱い。「何年かたったら尻子をやるから」といって願をかけるという。平戸─ある分限者に仕えた女は、毎日来て毎晩帰る。どこから来るか明かさないので、ある時、つけて行くと、海の波が二つに開け、女はその中に入っていった。本居では門に出して干してあった網の目を数えたという。夜分、旅宿の前を通る足音が暁まで続いた。翌日、旅の者が宿の主人に聞くと、あれは河童で日中は山におり、夜に入ると海に行って食べ物を求める。人間には害を及ぼさないと答えた。ヒョウスベとも。諫早在の兵揃村─この村の天満宮の神官の尻を厠で撫で、手を切られた。返してもらった礼に手接ぎの秘法を伝授した。東松浦郡福江町─暮れ方、橋の上で河童が五、六匹相撲をとっていた。男が飛び入りし、一匹の腕を抜いた。幾晩めかに返すとお礼に大きな青石をくれた。北高来郡有喜村亀首─夜釣りの糸に河童がしがみつき、同村中道では駒引きに失敗して捕まり、納屋の柱に縛りつけられたが、ドウズ(米のとぎ汁)をかけられ、力を得て逃げた。東松浦郡鎮西町─六月朔日に川に行けば河童に引かれる。陰暦五月十五日ともいう。東松浦郡樺島─河童は竹田番匠が使った人形で、工事のあと、どこへでも行って暮らせといって頭を叩いたので、そこがへこんで水が溜まっているという。

 

  • ガァッパ

水の怪。対馬で河童のこと。河童のよく現れる魔所をガァッパドコという。ガァッパは人によく憑くが、猿をつれてくると河童の憑いた人にとびつく。上対馬町舟志─オサダ・オサン・オツヤの三姉妹の河童がいた。長姉オサダは詫び証文を取られたが、その後も悪さは止まなかった。そこで約束の不履行を「ガッパの証文」という。対馬北部(上郷)の河童の大将は豊(上対馬町)におり、中将は佐護の恵古(上県町)、少将は佐須奈の船倉寺の川にいた。全島に号令する総大将は下郷の鶏知(美津島)におり、その名を千馬と称した。豊玉町唐洲─ガッパと仲良しの男がいた。いつも相撲をとっていたが、ある日、山の畑で働いているとガッパが来て「加勢するから一休みせよ」といった。そこで昼寝をすると「爺さん、済んだぞ」と声がかかった。目を覚まして見たが畑はそのままで、壊れた唐から鋤が一つころがっているだけだった。

 

  • ガシタロ

水の怪。河童のこと。北松浦郡宇久島。河童は牛にのる(憑く)ことがある。生柴で叩きながらお経をよんで外す。外したあとで牛はぐったりと疲れる。

 

  • カセカケオナゴ

裃掛女子。壱岐島。どのような妖怪か不明。

 

  • カワタロウ

水の怪。河太郎。対馬。波よけの石塘に集まって群れをなす。丈二尺余で人に似る。見れば亀の甲羅干に似ている。老小あり、白髪もある。髪を被ったようなものもあれば逆に天をつくようなものもある。人を見ると皆、海に入る。狐のように人に憑くという。島原。海中に人を引きいれて精血を吸い、体は必ず返すという。この死体を棺に入れず、ふつうの板の上に乗せ、草庵を結んでとり入れておけば、この屍体の朽ちる間に河太郎の体も朽ち、自ら倒れるという。

 

  • カワノカミ

水の怪。川の神。壱岐島でいう。この名の水神が毎月二十九日に水筋を通って他の井戸や池に通うという。その時、ヒョーヒョーという声が聞こえるという。また羽で翔ぶともいう。

 

  • キツネノカイ

動物の怪。平戸。桜馬場の武士の屋敷に狐火が燃えた。若侍たちがとり囲むと人を飛び越えて逃げたが、その時、人骨のようなものを落とした。これは火を燃やしたものだ、きっと取りにくるだろうと部屋に置いて障子を開けておいた。取りにきたので捕らえようとしたが、障子が閉まらず、骨を取り返された。見ると障子の溝に細竹が入れてあった。

 

  • クビキレウマ

動物の怪。首切れ馬。

 

  • セコ

河童が山に登ったもの。

 

  • ソコユウレイ

海の怪。底幽霊。五島では海の底に現れる幽霊で、海底に真っ白な姿で見えるという。西彼杵郡平島では、これに憑かれると舟が動かなくなり、海坊主のようになったり、幽霊船になったりするという。

 

  • タツクチナワ

動物の怪。蛇に耳のあるもの。

 

  • タヌキノカイ

動物の怪。狸の怪。郡代の一家に化け、庄屋の家で振る舞いされたが、見破られ犬を座中に放たれた。中には食い殺されたものもある。鹿撃ちに行った狩人が紡車を回し木綿を引く女に出会った。一発胸に当てたが車を回している。今度は紡車を狙って撃つと物音がして倒れた。大きな老狸で、女と見えたのは石、狸は紡車に化けていた。

 

  • テンコー

動物の怪。天狐。北松浦郡小値賀島でいう。この狐の憑いた者は一種の神通力を有し、そのいうことはあてになる。これに反してジコー(地狐)の方はたわいのないものである。

 

  • テンビ

火の怪。天火。テンピ。佐嘉。時として火毬が降る。人々は念仏を高唱して追う。郊外に追って野に入ればよいが、追わないと人家に入って火を発する。

 

  • トボシ

海の怪。西彼杵郡江ノ島でいう。マヨイボトケと同じ。北松浦郡平戸(平戸市)では単にヒという。

 

  • ナダユウレイ

海の怪。灘幽霊。五島でいう。島や船に化けて人を惑わす。船に乗って漕ぎよせ、競争することがある。負けると沈没するという。また杓を貸せといっても貸すのではない。貸すときは底を抜いて貸すともいう。

 

  • ニュウドウ

道の怪。入道。一町田村下田の釜を通っていた男に出た。前に立ち塞ふさがり、舌をペロペロ出していまにも一舐なめしそうな様子。男は一心に神を念じた。入道は五丈もあったが太刀を持った神が現れ一睨みすると、神輿のようなものに乗って布を長く引いて、丸山のほうへ逃げたという。

 

  • ニンギョ

海の怪。人魚。玄界灘を通る船の舳十余間の海中に出た。人体で腹下は見えなかったが、女で色青白く、髪は薄赤色で長かった。船を見て微笑し、海に没したが、魚身が見えて、沈んだとき魚尾が出た。これで、人は初めて人魚だとわかったという。

 

  • ヌリボウ

道の怪。壱岐でいう。夜間、道側の山より突き出すという。出る場所も定まりがあり、いろいろの言い伝えがある。

 

  • ヌレオナゴ

海の怪。濡れ女子。対馬では雨の夜などに出る濡れそぼった女の姿をした怪物をいう。壱岐でも海または沼から出る全身濡れしずくになった女形の怪をいう。

 

  • ヒダルゴ

道の怪。壱岐でいう。近畿地方でいうヒダル、ヒダルガミ。

 

  • ヒトコエオラビ

道の怪。一声おらび。対馬。名前を一度だけ呼ぶ。ふだん人を呼ぶ時は、二声か三声続けて呼ばなくてはならないという。おらぶは叫ぶこと。

 

  • フナシトギ

海の怪。壱岐の海上で遭遇する一種の怪魚。形はどんこ(九州ではカジカをいう)に似て腹の白い両側に四肢がある。これが船に吸いつくと船を止め、あるいは綱を伝って船内に入って人間を食うという。

 

  • ミコシニュウドウ

道の怪。見越し入道。壱岐などでいう。見上げれば見上げるほど丈が高くなる怪。道を歩いていると、わらわらと笹の音をさせる。黙って通ると笹が倒れてきて死ぬので「見越し入道見抜いた」という。

 

  • ムラサキギモ

道の怪。紫肝。対馬南部でいう。五月五日生まれの男と三月三日生まれの女は紫肝といって河童が好んでこれを抜き食うという。

 

  • メットッポ

道の怪。五島地方でいう。目一つ坊の意味で一つ目小僧のことらしい。出る日は一定しない。

 

  • ヤマオロ

山の怪。五島の福江市や南松浦郡岐き宿しく町でいう。人間の嬰児に似た小さな怪物。川の中にいて水の音をさせることもある。同郡青方町ではヤマウロといい、丈が三、四尺、毛だらけで人間の形をし、これと相撲をとった話もある。

 

  • ヤマオンナ

山の怪。山女。山仕事に行った親子が牛と馬をつないで餡餅を食べていると、突然一人の美女がどこからともなくエヘヘ、エヘヘと笑いながら出てきた。子供が父に知らせたが父にはその姿が見えず、女はそのうちヘゴ(大型のシダ類)の中に隠れてしまった。牛も馬もこの時はひどく驚いたという。

 

  • ユボウズ

水の怪。湯坊主。壱岐でいう。湯壺に出るという怪。

 

  • ヨゴレハッチョウ

音の怪。長崎市でいう。深夜出現する怪。ヨボエハッチョウの転訛かという。夜声八町の諺から来たものか。

 

  • ワッパ

水の怪。河童のこと。小値賀島。童形で池の中から出て相撲を挑む。